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教員対談

第4回 (2010.12)

續伯彦×森下英治

日本を背負っている自覚をもつこと

――最近、携帯電話が生活の必需品になっていますが、例えばメールについて、どう思われますか。

續:携帯電話は使わないわけじゃないけど、古典的な使い方しかしませんね。メールもほとんどしません。僕は親指で文字を打つのが遅いので、両手を使ったパソコンメールの方が圧倒的に早いですね。

森下: 僕は結構打ち間違えます。点を打つつもりで違う文字になってしまったり。

續: 携帯でも何でも電子的に送っているものは、記録されているという意識が強いんですよ。必ずどこかのサーバーにたまっている。だから後でチェックされる誰かが使うという意識があります。例えば今の子供達というか、携帯を日常的に使っている子供達は、そうは思っていない。リスクというか、記録に対してあまり意識してないのではないか。垂れ流しで、自分のところにきたら、自分のものだっていうふうに思っているのではないか。ものすごく危険ですよね。

森下: まぁ、ある意味能天気っていうか。

續: いつ、自分の行動がトレースされるかわからないし、言った言わないで、何の証拠に使われるかわからないから、いつどこにいたのか、言うなれば見張られてる。巨大なコンピュータが全てを管理していて、すべてを見張っているというのがありましたよね。ほとんどそんな世界に暮らしていて、その中に身を置いているんだっていう意識がない。

森下: まぁ戦後が近かったコンピュータを意識する人と、遠い現代人の違いかな。

續: そうかな。だから、僕は、メールは絶対に打ちっぱなしにしない。読み返す。

森下: そういうことですね。最悪どこかに載っても大丈夫なように確認するのですね。

續: 公開されたとしても、それはそれでよい、という風に責任を自分で取れるっていう意識で初めて送る。でも、そんなことをやっている子供がいるとは思えない。

森下: まぁ、指遊びで、ぱっと打ってるだけではないですかね。

續: まぁ、早く打てるのはいいことかもしれないし、感情を絵文字を使って感情豊かに打って、自分の気持ちを伝えられてるって信じてるところはわかるんだけど、相手かまわずそれを自分の物としてやっているって言うか、全てが自分の所有の世界だって思っているところが、ちょっと詐欺みたいなもんっていうように思える。

森下: 公共電波を意のままに使って、そういうような勝手な社会になってる。それを盾にして自由だと言ってせめて来る人はいないと思うよ。

續: だけどいったん訴追されれば、電波は誰のものか、電波に乗った記録は誰のものかってなったら個人のものじゃないんですよ。

森下: そうですね。だけど載せた情報そのものについて、あなたがこういうメールを送ったって言う追求は極めて少ないと思うんですよ。よっぽど何か持久性があるとかじゃないと。メールは皆に行くでしょ、つまりやたら数が多いので安心している。

續: でも、少しSF風だけど、キーワードを使って危うい通話をトレースしてる世界がまったくないとは言えないじゃないですか。

森下: もちろんサイバーコントロールっていうのをしてる可能性もありますね。

續: そういう意識がまったくなしに、メディアが無責任に携帯を販売してるのはどうかなって思います。それで、信書の秘密は侵してはならないと郵便法が書いている、けれどメールにはそういうのは書いてない。信書じゃないからね。

森下: まるで話すように耳に入ってきて、かつ残る。言った覚えはないよなんてことは言えない。とはいっても今更そのようなことをという感じがしますけどね。今の若者がそんなこと考えているんですかね?

續: 皆が考えないから議論しないっていうのは、それこそ能天気の極みで、そういう感覚から、ことの成行きも含めて社会、電波、メディアが誰のものなのか。

森下: その辺はもうぐちゃぐちゃですよね。

續: いや、ぐちゃぐちゃに、無茶苦茶に考えないで、成り行きで適当でという風になると僕らから見ると責任の所在がぼやかされてるんだよね。

森下: どこがそういう風にしてるのかなっていうのはあるよね。

――少し話は変わりますが、総合政策的な視点で見ると現代の社会はどう映りますか

續: 総合政策っていうと、まぁ社会の活動をするだとか、物を作るだとか、社会的な今の工業資源に関わることですよね。そういったものの本当の所有者は、形式的には国民になってますよね。じゃあ私も税金を払ってるし、1億分の1の所有者、その1億分の1の権限って何って考えると、0に等しい。だけど例えばある政治団体とか、政府とか工業団体とかってのは、ごく限られた人間が意思決定をしてしまう。省庁などがそうですけど、その省庁の権域で物になるじゃないですか。要するに明らかに所有が我々の手から離れてしまうじゃないですか。

森下: 離れて行ってしまうんですかね

續: それは形式的な処置はされていますよ。手続きだとか言ったものは。法的な処置はなされていると思うのですが…。

森下: 個人の意見が届かないことには間違いないですね。

續: そう。そうすると実質上そういう仕組みのスキームに入るか、典型的には霞が関が、社会的な資源を持ってくる。資源所有というより実質的な処分権を保有している。それで、そこに対して政策提言をするとか、政策立案をする。でも処分権のない人のプランと処分権を行使する人のプランというのは落差があり、シリアスに考えなければならない。

森下: 処分権のあるのないのを今使っている側が意識しないと、さっきの携帯の話に戻るけどそこに行きつくんじゃないのかなって思う。

續: だからね、 昨日テレビで医療と介護を何故離して考えなければいけないのかっていう番組を見たんだけど、それは厚労省が行政上担当が違うからとかで分けてる。 だけど、現場はそれじゃ困る。おじいちゃんたちが調子が悪くなったら病院に行きたいし、日常的には介護を受けたい。だから全体がわかったほうが事がスムーズに進む。しかし、厚労省は医療と介護を一緒にすることはできないと言う。

森下: なんだか幼稚園と保育園の違いと似てますね。

續: 管轄の違いですね。職務権を行使してる。そうなると、私たちは何を持っているのかを意識してないと、どこでひっくり返されるかわからない。現場の事柄の全体像を考える上で、介護の問題は私としてはいいテーマだと思う。携帯でも管轄はいろいろある。問題点になった時にようやく気付いてもその時には黙っているか、泣き寝入りしかない。 自分達の問題としてとられる意識の成熟度が低すぎると思う。

森下: そういう議論はあまりないのかな

續: させないんでしょう

森下: させないほうが政府には政策問題として都合がいい?

續: 裁判官制度が始まりましたよね。これを調べたらどうですか?などの言葉が言えない。 責任は負いたくない、負うぐらいなら辞めたいと考える教育は意識の外においといて、実際の権威をもっていてもそれを使用しない。 結局全部まとめて、誰が悪いかといえば、その議員を選んだ私たちが悪いということになる。国を自分たちが背負っているという意識が育っていない。

森下: 流されているだけになりますね。

續: 日常的なすべてのことがそうだから。

――續先生がおっしゃるように、今の日本は国を自分たちが背負っているという意識が育ってないようですが、昔の日本はどうだったと感じますか。

續: 前に会った人で、戦前と戦後の木を見ている人に会ったんだけど、木炭の代わりにって伐採されたことがあって、荒れちゃってどうすればいいかなって話をしたことがありました。

森下: 森林を壊すことは簡単だけど、直すことは難しいからね。相当な努力をして考えなければいけないですね。

續: 大体こういうことやればっていうことを決めたのは幕藩の時代じゃないですか。家を守り、たまに祭りなどで発散する。これで実際うまくいってたんだからね。これをネガティブにとるかそれともステディな関係になれたとポジティブにとるか。ただマネージメントは小さいね。長男制だし、地主とかの関係で土地の名士とかが十分発達しうるし、特産品を創造しうることができたのは救いだと思う。その土地の人は自分たちの状態がわかっていたんだと思う。それに比べて、私達が今育ててる人材はたとえできる範囲で、主体的な責任ある行動をとろうと言ったところで実際には動けないのではないか。そうすると、ここで勉強したことがどれだけ役に立つかってことを、かなり覚悟してやらないと限定的な教育になってしまう。

森下: つまり自分たちが立ち上がるためにどのような現実の仕掛けを壊していけばいいかの具体化を考えないと中々実現できない。意欲だけではいけないということですね。

――本日はお忙しい中ありがとうございました。 私たちも自分の発信するメッセージに責任を持ち、また、日本を背負っているという自覚を持って生活していきたいと思います。

教員紹介

續 伯彦 (Takahiko Tsudzuki) 續 伯彦 (Takahiko Tsudzuki)

プロフィール
名古屋大学大学院理学研究科博士課程満期退学(1974年)、名古屋大学理学博士(1979年)。愛知学院大学歯学部助手(1974年)、同講師(1979年)、教養部助教授(1987年)、同教授(1992年)、情報社会政策学部転属(1998年)、総合政策学部改組(2006年)。日本遺伝学会、日本分子生物学会、日本ソフトウェア科学会等に所属。
研究分野・専門分野
生命情報学
1. 葉緑体ゲノムの比較解析:塩基配列に基づくゲノム間の比較検討および新規遺伝子検索の手法開発を推進
2. 葉緑体ゲノム情報データベースの開発運用:太陽エネルギーを直接利用できる葉緑体の生産能開発を目指して集積されたゲノム情報の公開利用促進を目指す

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森下 英治 (Hideharu Morishita) 森下 英治 (Hideharu Morishita)

プロフィール
東京工業大学総合理工学研究科システム科学専攻博士課程修了。スリランカ測量局(青年海外協力隊システムエンジニア、在コロンボ)、東京工業大学社会工学科(助手)、国際連合地域開発センター(研究員)、アジア工科大学(助教授・准教授、在バンコク)、などを経て現職。近年の諸活動は研究分野参照のこと。日本計画行政学会、日本地域学会、日本環境共生学会などに所属。
研究分野・専門分野
1996年より、パキスタン・パンジャブ地方の環境改善に関わる調査・研究を続けている。水質汚濁の状況、原因、人体への影響を調べ、改善のための方法を技術面、政策面の両面から探っている。近年では、他の研究機関やNGOとの協働で調査・研究を進めている。(参考URL: http://www.uderc.com/)

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